2014年ごろから、アフリカ大陸からイタリアに渡ってくる移民の数が増え続け、2016年はピークの18万人以上になりました。
私が住む町でも、アフリカ系の人たちの姿を多く見かけるようになったり、現実に移民の波が確実に来ているのだなと感じることがあります。
その一方で、ここ10年間の経済不況などで、イタリア国民の貧困もよく耳にします。
今回は、この二つの問題を取り上げたいと思います。
※1ユーロ=132円で計算しています。
2016年に移民の数は過去最高になり、18万1,436人となりました。その後、2017年には11万9,247人と減少傾向にあります。
移民の流入は、2010年に起こった「アラブの春」と呼ばれるアラブ世界の反政府運動や2014年に勃発したリビア内戦が影響しています。
アフリカ大陸から船ですぐに到着できるイタリアの小さな島、ランペドゥーサには2011年の1月から9月で約4万5,000人もの移民が上陸したと記録されています。
私も記憶があるのですが、この時期はほぼ毎日ニュース番組で報道されており、ランペドゥーサという島が全国的に有名になりました。
移民と島民の間で緊張関係が生まれて、一時期緊急事態発生という状況になったのを覚えています。
イタリアに渡ってくる移民の多くがナイジェリア出身です。
2017年には1万8,000人でした。次に多いのがギニア、コートジボアール、バングラデシュで、各国でそれぞれ9,000人から1万人です。
その他、マリ、スーダン、チュニジア、モロッコ、セネガル、ガンビアなどなど、国の政治が不安定な国ばかりです。
イタリアは移民たちにとっては、一番近いヨーロッパの国のため渡りやすいこともあり、貧相なゴムボートなどで渡ってくるのです。
そのため、地中海で命を落とす人たちも後を絶ちません。イタリアは人道的な理由から、制限することなく受け入れてきました。そして、移民の救助に当たってきたのです。
こうした移民の問題を抱えながら、イタリアはこの10年間経済不況にも悩まされており、イタリアの貧困化はニュースや朝のワイドショー的な番組でも何度も聞かされました。
イタリア銀行の統計では、2016年に国民の4分の1が貧困層に入る危険があるとされているそうです。
2016年の調査で、月収830ユーロ(109,560円)が貧困層ラインに入る危険性があるとされ、それが2006年から2016年で19.6%から23%へと増加しました。
イタリア国立統計研究所では、2005年から2017年の約10年間で、絶対的貧困層が人口の3.3%から8.3%へと増加したとの報告も出ています。
それに対して、政府が何も手を打ってこなかったということと、移民の問題をただ受け入れるだけで何も対策をしてこなかったことへの批判が広まっています。
毎朝ワイドショー番組をつけて家事をしているのですが、本当に嫌というほど、この「貧困」「貧しい」という言葉を聞かされます。
その時の決まり文句が「イタリアの家族は、月末にはもうお金がない」というフレーズです。
特徴的なことは、やはりいつもイタリア内での南北の格差が言われていますが、この貧困層が南イタリアでは人口の半分にもなります。
また、若い世代がより貧困であり、親の世代より収入も少なくなっているということです。
日本でも親といつまでも暮らしている子どもがいると話題になりますが、イタリアでも同じです。独立するだけの収入が得られないという現実があるからです。
ただ、こちらは若い人の間ではルームシェアなどをしてる人も多く、家賃を節約しています。
2016年の統計では、平均年収は20,940ユーロ(276万4,080円)です。収入の一番高い州は、ミラノがあるロンバルディ州で24,750ユーロ(326万7,000円)、一番低い州は、カラブリア州で14,950ユーロ(197万3,400円)となります。
2017年の所得税申告の半分が、15,000ユーロ(198万円)を超えてないという報告もあります。
納税者の45%が、年収15,000ユーロ(198万円)から50,000ユーロ(660万円)の範囲にいます。
2017年の平均月収は、1,580ユーロ(20万8,560円)です。ヨーロッパ連合の平均月収が2,000ユーロ(26万4,000円)と言われていますので、それ以下になります。
ちなみに、私の夫は月1,700ユーロ(22万4,400円)で、2ヶ月のボーナスをもらっています。
そして、失業率は2018年6月の統計では、10.9%となります。ヨーロッパではギリシャ、スペインについで3番目に高い失業率です。
2017年の統計ですが、15歳から24歳では32.7%、25歳から34歳は16.6%、35歳から49歳は9.2%、50歳以上は6.2%です。
日本の失業率が約3%で、働き盛りの25歳から55歳の失業率が2%から4%と考えると、とても高い失業率となります。
また、契約期限のある雇用が増えているため、生活が不安定であるという傾向もあります。
こうした社会背景から、イタリア人の移民受け入れに対する考え方が変化しているという報告があります。
ある調査研究所の報告では、すべての移民たちの受け入れに賛成する人たちは19%、それに反対する人たちが27%、一部の移民を受け入れ賛成とする人たちが50%になります。
この報告では、移民受け入れに反対する人たちが年々増えているそうです。また、移民に対してイタリア人が警戒心を持ったり、敵意を抱いたりという傾向も以前より増えているとのことです。
確かにテレビの討論番組などで、自分たちが払っている税金が自分たちのためというより、移民たちのために使われているという意見を多く聞きます。
また、街の治安が悪くなるなどもよく聞かれる意見です。
私の町にもアフリカ系の青年たちがいますが、だいたいスーパーの前で買い物カートを元の場所に戻して、1ユーロ(132円)や50セント(66円)をもらうという小銭稼ぎをしています。
南イタリアでは、大型スーパーの駐車場で車の誘導をして小銭を稼ぐ人たちもいるそうです。
日本のように雇われて車を誘導する人がいるわけではないので、仕事にはなるのでしょうが、私たちからすると頼んでもいないのにお金を請求されるという印象です。
私の町で、こうした青年が悪いことをしたというニュースを聞いたことはないですが、私からすると若い青年がちゃんと働かないでブラブラしていると思ってしまいます。
今年3月の総選挙を経て、6月から新政権が成立しました。
高い失業率や高い税金、政治家の汚職、さらに大量の移民流入など社会問題が山積みのイタリア国民の意思を反映した政権と言えます。
イタリア国民の不満は、いくら働いても生活が改善しないということに尽きますが、新政権がまず行ったことはヨーロッパ連合に対して移民の問題を共に解決していってほしいと主張したことです。
今までの政権がこうした強い姿勢を見せたことはなく、長い議論の末、様々な問題解決のための案や策で合意を見せたことは、新政権の一定の成果と言えます。
また、新政権は9月24日に難民の受け入れを厳格化すると閣議決定しました。この法律が決定すれば、一部の移民を受け入れることになり、現在の国民の意思を十分反映している政策と言えます。
移民の問題に関しては、私はイタリアは寛容な国だと思っています。やはりキリスト教の精神が浸透している国だと感心します。
日本人なら移民と聞くだけで近づきたくないという気持ちがすぐ湧いてくると思いますが、こちらの人は気軽に話しかけたりしています。
ただ、そういったイタリアの国でも移民受け入れ反対の意見が増えているというのは、自分たちの生活が不安定であるということの裏返しとも言えます。
本記事は、2018年10月23日時点調査または公開された情報です。
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